招かざれる客

数日オヤジの姿が見えない。
気になり屋根の隙間から家の中に入ってみる。
天井の穴から覗いて見るとパジャマ姿のオヤジが一人座っている。
オヤジの連れは出かけて一人のようだ。
咳をしたり鼻をかんだりティッシュの山が側にある。
風邪をひいたようだ。
でかい身体をして人間は弱いもんだ。


昼に食べた丼をそのままにしてTVの映画に見入っている。
招かれざる客」だいぶ昔のアメリカ映画だ。
将来を誓った黒人男性と白人女性の二人が女性の両親に挨拶に来る。
という設定で始まる相当昔の映画のはずだ。
黒人男性と白人女性の結婚は、今以上に世間の風当たりも強かっただろう。
父親は娘の考えに理解をするも、娘の将来の苦労を思い躊躇する。
そんな父親も周囲の説得や妻に出会った時の若い自分を思い出し
そして娘の黒人男性との結婚への思いを受け入れた。
そんなハッピーエンドの結末に感動したのか?
自分の娘の結婚を思い出したのか?
うっすらとオヤジは目を潤ませていた。

脇には、いつの間にか焼酎のお湯割りが空になっていた。
まぁ酒を飲む気になったのなら明日には外に出てこれるかな。


ABOUT US

リード ドリーム代表
蔵のヤモリです。 茨城のとある町のとある蔵で長年過ごしておりました。 しかしながら時代の流れで蔵は次々となくなります。 そんな訳で今は、都心から少し離れた郊外のとある家に住み着いています。 その家の住人は、髪の毛も薄くなった70歳を目前にしたオヤジです。 65歳を過ぎたあたりから仕事に出かける姿が減りました。 その代わりチャリンコに乗って何やら出かけることが増えたようです。 今の私の楽しみは、そんなオヤジの毎日を観察することです。